安居 例えば小学1年生の授業で、「3+4=7」という計算を習うとします。アミークスではその計算を反復練習させることよりも、「この計算式をどう人に伝えるか?」を学ぶのです。
ある2〜3名のグループは、「バケツの中に3匹の魚がいました。魚釣りに行ったら4匹新たに釣れました。合わせて7匹になりました」というストーリーにして、そのストーリーを英語で話してタブレットに録音するだけではなく、バケツに3匹の魚が入っているところから7匹になったところまでの絵を描いて、みんなの前で発表をしました。
英語や算数という教科で切り分けるのではなく、プレゼンテーションも美術も含まれた総合学習ですよね。これこそが、まさにアミークスのイマージョン教育の現場風景だと思います。

──「自立した子どもが育つ」ことでも評価を受けていらっしゃるアミークスですが、なぜそれが可能なのでしょうか。

安居 大人の価値観を子どもに押し付けないということだと思います。何か起きたときに、「どうする?」「どう思う?」と疑問系で子どもに接すること。子どもたちが、その状況に応じて、最適解を自分で考えて選択できるように、教師はサポートを徹底します。
アミークスの場合は、ある教師が「いいよ」と言っても、別の教師が「ダメだよ」ということは、珍しくないんですよ。もちろん混乱はしますが、混乱も力に変える。「先生が言ったから正しい」と盲目的に捉えず、自分で考えることができるようになります。教師同士であっても、権威や立場でものを言うことはありません。

──アミークスだから描ける、子どもたちの未来はなんだと思いますか。

安居 みんな違う、だから進む道もそれぞれであっていい。アミークスが描くのは、「一人ひとりを活かす未来」だと思います。みんな一緒でなければというバイアスがかかりがちですが、学校内だけではなく保護者の皆さんとともに、「違っていい、それでいい」という安心感を与えてあげたいんです。違うからこそ、食い違いもあるけれど、対話なりディスカッションが生まれる。みんな一緒だったら、相談することもないし、進歩もない。違うからこそ議論が生まれて、その先の解決先を見出すというプロセスを担うことこそが、学校の使命だと思っています。

──安居学園長の、子どもたちに対する関わりにおけるポリシーをお聞かせください。

安居 アミークスの考え方と同じですが、基本的には、自分の価値観を子どもに押し付けないこと。それから、どんなに便利な世の中になったとしても、人間が育ち、学び、新しいことを吸収する時期においては、かかる手間は変わらないという考えがベースにあります。だからこそ、プロセスを大切にしたい。何でもスピード重視で、効率良くやることが推奨される中で、敢えて、手間暇かけなければできないことがある。人間本来の「苦労しながら生きる」というプロセスを、教育の中で取り戻し、子どもたちに伝えたいと思っています。

実際、簡単に身についたことは、簡単に消費して忘れてしまいますよね。自分に自信がなくなってしまうような失敗をして初めて、自分に足りないものに気づき、自分自身の栄養になる。
自己肯定感は、生きる上で重要だと思いますが、これは、生まれてからいままでの時間の中で薄い紙を重ねるように積み上がったものだからこそ意味がある。誰かにちやほやされて膨れ上がった自己肯定感はすぐに崩れてしまいます。私自身、効率を追い求めたい人間ではあるけれど、泥臭いことも延々とやり続けます。それは、自分にとっての納得を探すプロセスなのかなとも思いますね。

──泥臭く人間らしくというお話がありましたが、ある種効率の象徴でもあるような、テクノロジーについてもご意見をお聞かせください。これからの時代の、テクノロジーとの付き合い方についてどのようにお考えですか。

安居 まずは情報の発信やコミュニケーションなど、人と「つながる」ツールですよね。その上で、意志を持ってテクノロジーにかかわることが大切だと思います。YouTubeの動画を見たりスマートフォンで何か調べたりと便利なツールではありますが、受け手になりきってしまうのではなくて、常に意思を持つ。繰り返しの作業など、人間よりテクノロジーの方が適していることはありますが、クリエイティブな要素や、白黒つかない揺らぎの要素といった、より人間的な部分については、やはり人間が意思を持ってリードするべきだと思います。

──変化の時代を生きる、お母さん方へのメッセージをお願いします。

安居 いたずらに不安視しないこと。特にテクノロジーについては、「親だから子どもより知識量がある」とか、危険から守ってあげられる」ということは少ないと思った方がいい。新しい常識が生まれる中で、「どうするのか?」を一緒に考えることが大切だと思います。
あと何よりも、お母さん自身が楽しむことを忘れないでほしいですね。わからないことに目を向けて不安になったり、心配しすぎたりするのではなく、「こんなことができるんだ。すごいね!」と思えたら素晴らしいなと思います。

 



取材・文:伊勢真穂 撮影:yOU(河崎夕子)

>>【後編】アミークス国際学園 保護者インタビューを読む
イマージョン教育
未修得の言語を身につけるための、学習方法。目標とする言語環境で他教科も学び、その言語に浸りきった状態(イマージョン)での言語獲得を目指す。
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