2018年4月より新たに着任したのは、武蔵野女子学院中学校・高等学校です。2019年の男女共学化を目前にした同校の取り組みや、日本の教育現場における課題についてお話いただきました。



──日野田校長のさまざまな取り組みの根底にある、教師としてのポリシーを聞かせてください。

日野田直彦(以下、日野田) まずは「自分を主語にして話せる人間を育てないといけない」という思いでしょうか。自らを名乗らず、人を批判するような2チャンネラーや、人の悪口ばかりを探しているような人だけにはなって欲しくないんです。否定は大いに結構で、否定するならセットで代案を持てばいいだけのこと。人を批判することに時間を使うなら、より良くなる提案をする方が、お互いにとってよいはずなのに、いまは批判の応酬だけで終わるような風潮があります。この状況でクリエイティブなことが起こるはずがありません。
 私が教育を通じて実現したいのは、現代の松下幸之助や本田宗一郎を、たくさん育てること。戦後の日本を大きく発展させた松下電器産業や本田技研工業の創業者たちは、クレイジーで突き抜けたところがあったと思うんです。言わば“普通ではない部分”を活かすことができたから、あれだけのイノベーションにつながった。
 過激な発言に聞こえるかもしれませんが、平準化されたスキルしか持たずに上の立場の人が言うことを遂行するだけのイエスマンは、これからの日本には要りません。むしろ、個性が尖りすぎて扱いづらいと思われるような子どもを育てたいし、彼らがイキイキと活躍できる社会になっていってくれたらと思っています。また、大人はその姿を応援し、邪魔せず、極論を言えば、様々な意味での「投資」を行う社会を創ることが責務だと感じています。

──今、日本ではICT教育が盛んに叫ばれていますが、どのように展開されるべきだとお考えですか。

日野田 基本的には、「学校が教えてあげます」というスタンスでは、子どものモチベーションを下げるだけだと思っています。「新しいデジタルデバイスを使ってみたい」「テクノロジーを使って実現したいことがある」と、自らワクワクしている子どもたちは、勝手にテクノロジーを味方につけますから。
 これは私の基本的な考え方ですが、デジタルそのものがフローチャートの基本であり、合意形成や意思決定につながるはずです。なので、デジタル教育はした方がいい。ただ、「思考するときはアナログデバイスで」ということ。つまりは大きなスケッチブックですね。そこにマインドマップロジックツリーを、自分で好きなように書くことが大事です。
 MIT(マサチューセッツ工科大学)でもそうですが、学生はみんなスケッチボードを持ち歩いているんですよ。スケッチボードにメモをして、あとでデジタルデバイスに落とし込むというスタイルが基本。アイデアを発散させたり、物事を考えたりする時にデジタルデバイスを使うと、デバイスそのものの使い方や機能に意識が向かってしまって、自由な発想を生み出すことにエネルギーを集中させられなくなってしまう。まずは頭の中にあることをどんな風にビジュアル化するのか。そして、デジタルデバイスを使ってどう共有するのかという順序が最適だと思います。



マインドマップ
思考・発想法のひとつ。メインテーマを中心におき、それに関連する内容を放射状に書き出していく。色や絵を多用するため、アイデアを出しやすかったり、ひと目で覚えやすかったりすることが特徴。

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ロジックツリー
問題の原因解明や解決策立案のために、問題を論理的に関連した要素ごとにツリー(樹木)状に分解し整理する方法のこと。

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