──生徒さんたちの変化とともに、教師側にも変化があったそうですね。

日野田 教師が一方的に話をして、生徒がノートをとるというスタイルの授業では、生徒たちが納得できなくなってきたんですね。自分の意見を持って発言することに慣れてくると、相手に提案したくなるものだから。その一方、教師は双方向のコミュニケーションや、建設的な議論に慣れていない人が大半でした。ハーバードやMITの学生さんと教師が共同でワークショップを企画する経験などを通じて、教師自身も変化していく場をつくりました。
トップダウンで変化を促しても、反発が起きるだけです。特に、従来型の教育を受けて育ち、その従来型の教育を提供する側に回った人にしてみれば、常識を覆されるわけですから、抵抗する気持ちが出て当然です。逆に教師自身が変化を「面白い」と思うことができれば、新しいコミュニケーションスタイルを通常授業でも取り入れてみたいと思う。自律型な変化は、生徒だけではなく、教師自身にも起きました。

──変化の時代を生きる上で、日野田校長ご自身が大切にしていることはありますか。

日野田 この世に生まれてきた以上は、誰かに貢献することが命題だと思っています。ベースとして忘れたくないのは、相手に対する「優しさ」。最近よく「世界貢献」というキーワードを耳にしますが、そんな壮大な話は必要ないんです。
例えば、アイロボット社はMITの学者が設立した会社ですが、研究室の仲間の「忙しくて家が掃除できなくて困っている」という悩みをテクノロジーで解決しようとして、お掃除ロボットが生まれました。自分の周りの人が困っていたら、それをクオリティ高く解決するだけのこと。もしかしたらその解決法は他の人にも適応できるかもしれないし、その取り組みへの賛同者が増えて大きなムーブメントになるかもしれない。でも、それはただの結果論です。

──最後に、お母さんたちへのメッセージをお願いします。

日野田 お母さん自身が真っ白な状態になって、子どもに教えてもらうというスタンスが一番大切だと思います。親が教えようとすればするほど、子どもは嫌がる生き物です。皆さんもそんな時代がありましたよね。 テクノロジーでもなんでも、進化の速度が早いので、子どもたちの方がよく知っている可能性もある。親が してあげられることは、機会の提供くらいなんです。サマーキャンプでもテックキャンプ(プログラミング学習)でも塾でも、何でも体験させてあげて、どれが子どもに合うのかを探すしかない。「絶対に大丈夫」という正解はないので、根拠のない評価に踊らされて正解探しをしないこと。
これからの時代は「有名だから万事OK」ということもないですから、自分たちの感覚に正直に、挑戦していけばいいと思います。

 

取材・文:伊勢真穂 撮影:山本マオ

 

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