── では、ここから巣立っていく子どもたちの未来に対してはどのようにお考えですか。

成島 前述したような「2050年の日本と世界」などはデータで予測できますが、本当にどうなっていくかは誰にも言えないと思うんです。ただ、校訓である「恥を知れ」というのはいまも校章の裏に刻まれていて、これは自分にめがけての言葉なんですね。変化が激しく、予測不可能な社会や時代を渡っていかねばならない自分を常に律して高めていくのに、とても包括的で役に立つ言葉だと思います。

大妻中学高等学校の校訓「恥を知れ」。もともとは、四国土佐の郷士であった大妻家の家訓であり、コタカは「これは決して他人に言うことではなく、あくまでも自分に対して言うことです。人に見られたり、聞かれたりしたときに恥ずかしいようなことをしてはいないかと、自分を戒めることなのです」と語っている。

 例えば、プログラミングは30年後には必要がないかもしれないけれど、「関心ありません」と引きこもらずに、挑んで学ぶ。それが「恥を知れ」という言葉のもつ意味だと思うんです。つまり「変化し続ける、学び続ける人であれ」と……。そういう精神を徹底的に身につければ、どのような変化にも耐えうる人間になれる。これからも100年続いた校訓を信じています。

── 最後に、子育て中のお母さんたちに向けてのメッセージをお願いします。

成島 子どもを信じてください。お母さんたちも経験したことがないことを、これから子どもたちはやらなくてはいけない。「えっ?」と驚くような失敗をいろいろしてしまうかもしれない。でも、どうか見守ってあげてほしいです。

 コンピューターの使用も同じです。変な人や悪い世界と繋がってしまうのではないかと心配したらキリがない。インターネットの世界と一生離れて暮らすことはできない時代なのだから、逆に家庭でルールを設けて、使い方を一緒に決めたり学んだりしてほしい。いつか子どもは社会という荒波に放流しなければいけません。安全な池の中にいつまでも入れておけない。そういう意味では、躓ずかせたり転ばせたり、親子で喧々諤々しながらいろんなことを経験してほしいなと思います。失敗させるのも愛情のうちですよ。


情報化・ICTコーディネーター
加藤悦雄先生先生インタビュー

 2018年9月1日より、中学1年生から高校1年生までの4学年、約1,200人の生徒にタブレットをひとり一台もたせました。これは親御さんの理解を得たうえで、親御さんに費用を出していただいています。セキュリティは、学校内では小学生レベルの厳しいフィルタリングをかけていますが、帰宅後の使用に関してはご家庭でルールをしっかりと決めていただいています。ちなみに家庭でのインターネット接続率は99.7%です。
 学校内の施設としては、各教室すべてに高性能のプロジェクターが入っており、無線ルーターのアクセスポイントは9階から地下1階までの校舎内に129カ所あります。高校2年生と3年生には、今年の8月にコンピューター室をリニューアルしたので、その際に貸出用ノートパソコンを50台そろえました。

 タブレット自体は保存容量が64ギガしかないので、すべてのデータはGoogle for Educationというクラウドに上げ、個人アカウントでアクセスできるようになっています。例えば、授業で使用する写真や図版などはこれまでプリントアウトして生徒に渡していたけれど、予算の都合上、カラーでは渡せなかった。タブレットを使用すれば、自分の画面でカラーで見られます。紙で提出していた宿題をタブレットで出すということも増えており、しかも筆記のみならず、英語の宿題はスピーチを録音して提出するということも行われています。予算の削減ができ、紙ムダがなく、生徒にとってみればプリントをなくさないで済む(笑)。いいことづくめですよ。ただし、プログラミングもそうですが、必ずしもタブレットの使用を全員が得意とするわけではない。シャーペンとノートで勉強したほうがいい子もいるので、そこは無理やりやらせないようにしています。

 教師に対しては2週間に1回、「ティーチャーズナイト」と称して、私が16時から30分の研修を2コマ実施しています。本校の専任教師は85人ですが、初回から20人の先生が来て、タブレットへの配信の仕方やプロジェクターに映像を流す方法などを熱心に学びました。放課後に私のいるコンピュータラボにやってきて、翌日の授業のやり方を相談される先生も多くなってきました。そういう先生は、いままで蓄積されたネタをいっぱいもたれているので先生が、テクノロジーを使いながら新しい授業を構築しようとする姿は実に頼もしいです。

 トラブルに関しては、Googleハングアウトという連絡網を作成して対応しています。オンラインでつながっているので、「授業でWi-Fiが立ち上がらない」というメッセージが来たら、すぐに対応策を私が返信します。他の教師も一連のやり取りを見られるので、ひとつの症状が繰り返して起きた場合は、対応方法がすぐに全教職員にわかるという仕組みです。

 2020年度の大学入試では、学力だけでなく、高校の部活動や行事でどういった活動を行ったか、そこから何を学んだのかを評価する可能性が広がります。部活や学校外の活動成果など、高校生活のさまざまな活動の記録をデジタル化できる「eポートフォリオ」としても、このタブレットを大いに活用してほしいと考えています。



取材・文:堀 香織  撮影:山本マオ


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