日本には、起業で成功している人が多くいる一方で、日々小さなベンチャー起業が生まれては数年後には姿を消していることも事実です。
実は起業してから10年後には約3割、20年後には約5割の企業が淘汰されるといった厳しい現状があることをご存知でしょうか?

出典:中小企業白書2011

起業に失敗する原因にはどのようなものがあるのでしょうか。その原因を紹介することで、これから起業する方の参考になればと思います。

起業に失敗する3つの原因

■資金不足での失敗

起業を失敗するよくある原因の一つに、資金ショートが挙げられます。資金ショートとは、手元の資金が少なくなり、運転資金が不足した結果、仕入れに関わる支払いや従業員への給与支払いができなくなる事を指します。
例えば起業と同時に、便利な場所でオシャレなオフィスを構え、高い賃料が事業を圧迫するケースがあります。

また売掛金や買掛金での取引が主なビジネスの場合、回収と支払のタイミングにタイムラグが生じ、利益が出ていても支払いが先にきて資金が足らず、黒字倒産するケースもあります。
さらに、事業の業績不振で思ったような売上があがらず、事業自体が立ち行かなくなる場合もあるでしょう。いずれにしても、資金不足は事業が失敗する最も多い原因となります。

■人間関係での失敗

例えば、仕事仲間の2人が出資金を半分ずつ出し合い株式会社を共同経営で設立しました。しかし、一方は机上の空論ばかりで手や足を動かさない。一方は営業活動、チラシ配り、パート・アルバイトさんの確保や広告宣伝に奔走し、寝る暇もないほど多忙な日々を送っています。

やがて、手足を動かしている一方の経営者が業を煮やし、一方の経営者を責め始めます。そして意見の対立が激化し一方の経営者は会社を去っていきました。その後、会社を去った経営者は弁護士を雇い出資した資金の返還を求めます。こうなってくるともはや事業どころではなくなり、事業の経営状況も悪化。やがてこの会社は廃業することとなるのです。

このように、共同経営には大きなリスクがはらんでいます。同じ方向を目指し、同じ夢をみて設立したはずの会社でも、意見の食い違い、経営者という仕事の認識の違い、本当にちょっとした人間関係や気持ちのスレ違いから事業の失敗を生み出すケースは案外多いのです。

■事業見込みの甘さによる失敗

事業失敗

起業したはいいものの、全く商品もサービスも売れない、お客さんからの問い合わせもない。こういった原因は、起業前の市場ニーズの調査不足や見込みの甘さがほとんどです。
実は同じようなビジネスモデルが世の中に数多くあるケース、たいして大きな特徴も強みもない事業にもかかわらず「世の中にない新しい事業だ!」と信じ込み失敗するケースや、サラリーマン時代に「独立したら君に仕事をお任せするよ!」という社交辞令を信じ、いざ独立してみたら見向きもされなかった、というケースもよくあります。
大きな企業に属していると、企業の看板やブランドが自分を引き立ててくれていることを忘れ「自分だから商品が売れた、自分はすごい」と思い込んでしまい、いざ独立してみたて自分の市場価値にはじめて気づく起業家も多くいます。

起業に失敗した人の事例

以上、よくある3つの失敗事例を紹介しましたが、実は失敗の原因は必ずしも一つではないことがほとんどです。

  • 資金繰りの悪化
  • 人間関係の悪化
  • 市場のニーズ調査の甘さ
  • 事業の方向転換ができない融通のなさ
  • どんなことがあっても這い上がってやるという気持ちのなさ

こういったことが複合的に作用して起こるものです。

ここで起業に失敗したとある起業家の事例を1つご紹介したいと思います。

共同経営で400万円を資本金とし、家事代行とベビーシッター派遣を主たる事業としたA氏。自宅の一室を事務所にし、正社員1名雇い入れ共同経営で事業を漕ぎ出しました。従業員への給与は毎月20万円、地代家賃は3万円とし、役員報酬は当面0円でなんとか事業を軌道に乗せようと奔走します。

しかし思うように顧客が獲得できず、1か月目の顧客は0名、2か月目の顧客も0名、3か月目も0名と全く事業として成り立たたない日々が続きます。自分自身の収入もさることながら、会社の資金が毎月目減りしていっていく危機感と、思うように集まらない顧客。そして、共同経営者との意見の食い違いで、精神的に疲弊していきます。

何故、こんなに人が集まらないのだろうか?と再度マーケティングをしてみると、サービスエリアを限定しすぎていることに気が付きました。
そこで、サービスエリアを広げ広告宣伝をしたところ、一人またひとりとサービスを利用したいというお客様から問い合わせが入るようになりました。そうなってくると、今度は人手が足りない。小さなお子さんをお客様のご自宅でベビーシッティングする仕事のため、おかしな人を採用するわけにもいかず、今度は採用活動に奔走することになります。

そんな中、決定的な意見の食い違いと事業の在り方についての口論が原因で、共同経営者が会社を去っていきました。そのころには苦しいながらも、50名近くの固定のお客様がおり、パートの従業員も十数名抱える程の企業となっていたのです。一人でも頑張ってなんとか事業を軌道に乗せようと寝る間を惜しんで仕事をしますが、ある日相手方の弁護士と名乗る男性から会社宛に連絡がありました。内容は「共同経営を持ち掛けられたが、結局詐欺にあったようなものなので出資金を返還して欲しい」というような趣旨。

原則として「融資」されたお金は返還の義務がありますが、「出資」されたお金は返還の義務はありません。相手もそれは知っていたはずですし、まだまだ苦しい会社経営で自分の役員報酬は毎月3万円程度。そのため自らの会社の資産を売却し、出資金を返還することもできません。しかし、A氏は感情論として相手の言っていることも理解できたので、会計事務所に現時点での自社株の評価額を算出してもらい、その価格+αでA氏個人が相手方の株を買い取ることで資金を返還する形をとりました。しかし、A氏は精神的にも肉体的に限界がきてしまい、結局事業を閉鎖することになったのです。

この起業の事例では「スタートアップ時の市場の見通しの甘さ」「正社員を雇用した(固定費で経営はひっ迫)」「経営者同士の人間関係の悪化」「最終的な諦め」などが起業の失敗の要因です。
1つの要因ではなく、複数の要因が重なって失敗してしまったのです。

失敗しないために気を付けたいこと

起業で失敗しないために

1,共同経営はリスクが伴う

どんなに熱く経営や未来について語り合ったとしても、人間は全く同じ考えを持つことは不可能です。しかも、自分の生活や社員の生活が関わる「会社経営」となると、なおさら意見の食い違いが発生し、起業の失敗に繋がりかねません。
友人、知人、元同僚など「この人となら絶対にうまくいく!」と信じ、共同経営という名目で起業するのは人間関係がこじれた時のリスクが大きいことを頭の片隅に入れておかなければなりません。

2,固定費はなるべく下げる

オシャレな事務所や高級なデスク・PCは事業が軌道に乗ってから購入・検討しましょう。事業内容にもよりますが、自宅の片隅に電話線を引いてノートPCをネットに繋げば、立派にオフィスになります。起業=オシャレなオフィスを検討する人が多々いらっしゃいますが、それは大変危険です。固定費がかかりすぎて、いくら売上があがっても赤字というリスクを抱える要因となります。さらに、いきなり会社を退職して起業するのではなく、まずは土日にフリーランスとしてできる事業を検討するのも一案です。

3,事業計画を都度見なおす

事業は当初予定していたサービスや商品ではないところから、利益が生まれることが多々あります。事業継続するには「儲け」がなければ成り立ちません。当初のサービスや事業計画にこだわりすぎず少し頭を柔軟にし、世の中の流れやニーズに合わせて事業計画を見直すことも、会社を存続させていくためには大切です。

まとめ

今回は起業失敗の原因をまとめていきましたが、小さく賢く起業し、やがて大きな企業にした経営者は日本にも世界にも大勢います。

できるだけリスクを排除し、まずは一人でも始められるような事業計画を立て、週末などで小さく事業を始めることが成功への近道かもしれませんね。今回お伝えした内容がこれから起業を目指す皆さんの参考になれば幸いです。